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不正指令電磁的記録作成等罪によって押収された電子データ [技術]

不正指令電磁的記録作成等罪によって押収された電子データを返還する際、消去して良いかどうかの疑問点について調査しました。

刑訴法498条の2が適用できるかどうかです。

同条第1項の「不正に作られた電磁的記録」とは、権限がないのに、又は権限を濫用して、記録媒体上に存在するに至らしめられた電磁的記録のことをいうため、不正指令電磁的記録とは異なる意味で、「不正に」が用いられていることが分かります。

そのため、電磁的記録不正作出罪(刑161条の2第1項・2項)や支払用カード電磁的記録不正作出罪(刑163条の2第1項)の犯罪行為によって作られた電磁的記録等がこれに当たることになり、不正指令電磁的記録作成等罪に該当する不正指令電磁的記録が該当するのかどうかは明らかではありません。


http://www.seirin.co.jp/pdf/009100s-rev-2.pdf
電磁的記録の没収として制定された刑訴法498条の2の解釈。
重要なので以下に引用します。

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第498条の2〔電磁的記録の消去等〕
1 不正に作られた電磁的記録又は没収された電磁的記録に係る記録媒体を返還し、又は交付する場合には、当該電磁的記録を消去し、又は当該電磁的記録が不正に利用されないようにする処分をしなければならない。
2 不正に作られた電磁的記録に係る記録媒体が公務所に属する場合において、当該電磁的記録に係る記録媒体が押収されていないときは、不正に作られた部分を公務所に通知して相当な処分をさせなければならない。

本条は、不正に作られた電磁的記録に係る記録媒体を返還等する場合には、当該電磁的記録を消去等しなければならないこととするものである。

⑴ 趣旨等

ア 電磁的記録とは、刑法7条の2において規定されているとおり、一定の記録媒体上に情報ないしデータが記録・保存されている状態を表す概念であり、電磁的記録は、常に、有体物である記録媒体上に記録・保存されている状態で存在するものであるから、刑法上、その没収は、文書偽造における偽造部分の没収と同様に、有体物の一部の没収として行うことができると考えられる。
 しかしながら、文書偽造における偽造部分の没収については498条においてその執行方法が規定されているのに対し、電磁的記録の没収についてはこのような規定が設けられておらず、その執行方法は必ずしも明らかでないと言わざるを得ない。
 そこで、これを明確にするため、498条と同趣旨の規定として本条が新設された。

イ 有体物の一部没収として電磁的記録のみを没収する場合、刑法19条2項前段の「犯人以外の者に属しない物」に当たるか否かは、当該電磁的記録に係る権利関係によって判断することになる。したがって、当該電磁的記録が犯人に属するのであれば、その没収は可能であると考えられる。

ウ 110条の2による電磁的記録の移転が行われた場合、元の記録媒体に記録されていた電磁的記録は、移転先の他の記録媒体上に移転後の電磁的記録として存在するに至っているものと評価されることから、元の記録媒体に記録されていた電磁的記録が没収の対象となるべきものであった場合には、これに対応する移転先の他の記録媒体上の電磁的記録が没収の対象となることとなる。
 他方、同条による電磁的記録の複写が行われた場合には、複写後も、原本たる電磁的記録は元の記録媒体上に存在しているのであって、元の記録媒体に記録されていた電磁的記録が複写先の他の記録媒体上に複写後の電磁的記録として存在するに至っていると評価されるわけではないことから、複写によって存在するに至った電磁的記録は没収の対象とはならないこととなる。

⑵ 第1項

ア 本項の処分をしなければならないのは、「不正に作られた電磁的記録又は没収された電磁的記録に係る記録媒体を返還し、又は交付する場合」である。
 「不正に作られた電磁的記録」とは、権限がないのに、又は権限を濫用して、記録媒体上に存在するに至らしめられた電磁的記録のことをいう。例えば、電磁的記録不正作出罪(刑161条の2第1項・2項)や支払用カード電磁的記録不正作出罪(刑163条の2第1項)の犯罪行為によって作られた電磁的記録等がこれに当たる。「没収された電磁的記録」が別途掲げられていることとの関係上、ここにいう「不正に作られた電磁的記録」には、「没収された電磁的記録」は含まれないこととなる。
 また、「没収された電磁的記録」とは、没収の言渡しの対象とされた電磁的記録のことをいう。
 「返還」は、その相手方が当該記録媒体の被押収者である場合を前提とするものであり、「交付」は、その相手方が当該記録媒体の被押収者ではない場合(例えば、110条の2により捜査機関の所有する記録媒体に移転された電磁的記録の一部について没収の言渡しがあった場合において、捜査機関が当該記録媒体の所有権を放棄するときなど)を前提とするものである。

イ 本項の処分としては、「当該電磁的記録を消去」するか、「当該電磁的記録が不正に利用されないようにする処分」をしなければならない。
 「消去」とは、消すことであるが、通常の方法では電磁的記録の内容を認識し得ない状態にすることによって行われることとなる。
 「当該電磁的記録が不正に利用されないようにする処分」としては、例えば、電磁的記録に複雑な暗号をかけて利用できないようにすること等が考えられる。

⑶ 第2項

 本項は、基本的に498条2項ただし書に相当する規定であり、同項本文に相当する、不正に作られた電磁的記録に係る記録媒体が公務所に属するものでない場合に当該記録媒体を提出させることについては規定していない。これは、電磁的記録は、物とは異なり、容易に複写できる性質を有していることから、あらかじめ、没収の対象となるべき電磁的記録が記録されている記録媒体の押収又は110条の2による当該電磁的記録の移転をしておかなければ、当該電磁的記録と没収の裁判時に存する電磁的記録との同一性を判断することは困難であることによる。
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