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電磁的記録不正作出罪の検討 [法律]

電磁的記録不正作出罪を調査しましたので、メモを残しておきます。

まず、適用される対象として、刑法3条をチェック
■刑法3条柱書
「この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。」

■刑法3条13号
「第159条から第161条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第5号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第161条の2の罪」

前条第5号は、刑法2条5号のことですので、
■刑法2条5号
「第154条(詔書偽造等)、第155条(公文書偽造等)、第157条(公正証書原本不実記載等)、第158条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第161条の2(電磁的記録不正作出及び供用)の罪」

刑法3条13号の前条第5号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録は、公務所や公務員によって作られるべき電磁的記録ではない電磁的記録という意味になります。

つまり、日本国外において私電磁的記録不正作出罪及び供用罪を犯した日本国民に適用する隣、国民の国外犯適用があります。

■刑法161条の2第1項
「人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
■刑法161条の2第2項
「前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」
■刑法161条の2第3項
「不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。」
■刑法161条の2第4項
「前項の罪の未遂は、罰する。」

■「人の事務処理」
・人の事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録
・権利、義務に関するものは、オンライン化された銀行元帳ファイル記録、乗車券の磁気ストライプ部
・事実証明に関するものは、
 ・パソコン通信のホストコンピュータ内の顧客データベースファイル(京都地判H9.5.9)
 ・ネットオークション運営会社が管理するサーバコンピュータ内の会員情報に関する記録(大阪高判H19.3.27)
・事務処理とは、他人の財産上、身分上その他の人の社会生活に影響を及ぼし得ると認められる事柄の処理
→業務性、法律的事務、財産上の事務かは不要
■「目的」
・人の事務処理を誤らせる目的であり、不正に作出された電磁的記録を用いて他人の事務処理を誤らせる目的のこと
■「不正に作」出(不正に作った)
・不正に作出とは、権限なく又は権限を濫用して電磁的記録を作出すること
→記録の作出に関与する権限がない、あるいは権限があってもこれを濫用して記録を作出した場合
・作出には、記録を作り出すことのほか、既存の記録を部分的に改変、抹消することによって新たな電磁的記録を存在させた場合も含む

事例)オークション事件(大阪高判H19.3.27)
・インターネットオークションを運営管理するヤフーのサーバコンピュータに対し
 ・3名の会員のID及びパスワードを盗用し、計100回の不正アクセス
 ・2名の会員のパスワードを不正に変更したという虚偽の情報を送信
 ・会員に成りすましてオークションに出品された商品に対して入札した事実がないのにこれを落札した旨の虚偽の情報を送信
 ・情報をサーバコンピュータに記憶蔵置させた

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