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リバースエンジニアリングの合法化(改正著作権法30条の4)? [法律]

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第30条の4 著作物は,次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には,その必要と認められる限度において,いずれの方法によるかを問わず,利用することができる。ただし,当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。
一 著作物の録音,録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から,当該情報を構成する言語,音,影像その他の要素に係る情報を抽出し,比較,分類その他の解析を行うことをいう。第47条の5第1項第号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか,著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては,当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合


サイバーセキュリティの確保等のためにソフトウェア(プログラム)を調査解析することは、平成31年1月1日から、著作権侵害とはならない権利制限規定になり、著作権侵害の例外になりました(H30年改正著作権法30条の4)。これは、プログラムの調査解析を目的とするプログラムの著作物の利用(いわゆるリバースエンジニアリング)を、権利者の許諾なく行うことができるようになった権利制限規定です。

著作権の対象となる著作物とは、人の思想、感情を創作的に表現したものであり、ソフトウェアの著作権を保護するためには、ソフトウェアの複製権、翻案権の侵害をさせないことにありました。

そして、著作権は、アイディアを保護するものではなく、そもそもソフトウェアのアイディアを工夫、利用して別のプログラムを作成する場合は、問題ないとされていました。この元々のアイディアを解析するためにリバースエンジニアリングが行われていました。

翻案権は、
「既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為」(最判H13.6.28)
と定義されており、元の著作物の本質的な特徴を模倣するようなものは認められませんが、それ以外は、認められると考えられていました。

元々著作権を保護したのは、経済的利益として、思想又は感情の享受をして、知的・精神的欲求を満たすという効用のために、これを享受した人が対価を支払うことを保護したのであり、対価回収の機会が損なわれなければ、著作権の経済的利益の侵害には当たらないと考えられています。また、経済的利益以外にも、著作物等の視聴等を通じて、視聴者等の知的又は精神的欲求を満たすという効用を得ることに向けられた行為であるか否かという観点から、ある行為が著作物に表現された思想又は感情の享受を目的とする行為かどうかが判断されることになります。
経済的利益のみを考えると、フリーソフトウェアの著作権を保護できないと考えられますので、後者のように表現された思想又は感情の享受を目的とする行為かどうかで判断されるのが望ましいと考えられます。

これらの考えに基づけば、表現と機能の複合的性格を持つソフトウェア(プログラム)の著作物については、対価回収の機会が保障されるべき利用は、プログラムの実行などによるプログラムの機能の享受に向けられた利用行為であると考えられるため、リバースエンジニアリングは、プログラムの実行などによってその機能を享受することに向けられた利用行為ではないことから、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合に該当すると考えられています。

※以下は修正しました(2019/4/30)。

しかし、リバースエンジニアリングによる解析が、著作権侵害にならないということは、刑事罰に問われることはなくなったと考えられますが、利用規約でリバースエンジニアリングを禁止できてしまいます。
そうすると、これまでも利用規約でリバースエンジニアリングを禁止していたことは、権利の濫用や不公正な取引方法として違法でなければ有効であったため、改正著作権法においても、利用規約でリバースエンジニアリングを禁止できることになり、この利用規約に反してリバースエンジニアリングした場合には、著作権法的には権利制限規定のために著作権法違反にはなりませんが、利用規約違反になります。

また、リバースエンジニアリング以外の行為(例えば、本質的な一部分を逆コンパイルしてソースコードに変換する行為、デバッギング行為、マシン語に変換する行為等)も目的の点から著作権法違反ではありませんが、利用規約で制限することもできるため、
リバースエンジニアリング=(著作権法違反にならずに)合法であり、利用規約違反にはなり得る
と考えられます。


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