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殺人の引受&依頼の考察 [犯罪]

殺人の引受の掲示板の問題点を興味で色々調べて&考えてみました。

ご意見、訂正、補正、感想などありましたら、コメント下さいませ!m(_ _)m
#特別法違反は除外

まず、民法的観点
掲示板に申込を受け付ける方式は申込の誘引です。これは、相手方の申込を待つものであり、相手方の申込があっても直ちに契約は成立しません。
相手方が掲示板の内容に応じて意思表示をすると申込になり、誘引者の承諾があって初めて契約が成立します。

ということは、掲示板に『殺人引き受けます』とあった場合、それに『○○を100万円で殺して下さい』と依頼しても契約は成立していません。
誘引者が『引き受けました』となって、初めて契約成立です。

次に、依頼者が100万円のお金を相手方の銀行口座に振り込みましたが、誘引者が殺人を実行せずに逃げました。依頼者はお金を返せと訴えられるでしょうか?

これには、殺人依頼は公序良俗違反(民法90条)として無効行為となり、不法原因給付(民法708条)の適用となり(有名なクリーンハンズの原則)、依頼者は金銭返還請求(不当利得返還請求)ができません。
ここで、不法とは何を指すか争いがありますが、法の助力を否定するものであるため、公序良俗違反を指すと解します(判例)。

708条の要件事実は、(1)不法な原因のためであること、(2)給付が行われたことです。

給付とは相手方に終局的利益を与える行為(判例)、すなわち、金銭なら相手方の占有におかれることになります。
ちなみに、銀行口座への振込みは銀行の占有下ですが、債権者(口座名義人)は誘引者なので、誘引者の占有下にあるといえます。

また、依頼者の返還請求ができないことの反射的効果として、誘引者に金銭の所有権が移転します。

というわけで、殺人依頼をして金を振り込んでも誘引者が逃げてしまえば、お金は取り返せません。

次に、刑法的観点
殺人の申込の誘引をした場合、依頼者は殺人犯ではありません。つまり、殺人を依頼するため、依頼者も殺人の教唆犯になります。
つまり、誘引者は、教唆の教唆をした者ということで、間接教唆になります。

誘引者は自己への殺人を依頼させるために掲示板に依頼の申込を誘引するという、殺人の教唆の教唆をし、依頼者はそれにのって誘引者に申込をすれば、殺人の教唆になり、誘引者が殺人をすれば誘引者は殺人罪になります。

1)誘引者が殺人した
誘引者:殺人罪
依頼者:殺人罪の教唆

2)誘引者が殺人したが相手は死ななかった
誘引者:殺人未遂罪
依頼者:殺人未遂罪の教唆

3)誘引者が殺人の準備をした
誘引者:殺人予備罪
依頼者:殺人予備罪の教唆(ならない場合もある)

では、依頼者が100万円を誘引者の銀行口座に振り込んだが、誘引者が殺人をせず逃げた場合、どうなるでしょうか?

まず、依頼者は殺人の教唆犯は成立しません。なぜなら、正犯(依頼者)が何もしていないため、殺人は発生していない(法益侵害が発生していない)にもかかわらず、教唆犯だけを処罰するわけにはいかないからです。
#ここで特別法違反の場合がありえます。暴力行為法違反。

次に、不法原因給付で依頼者はお金を返還請求できません。しかし、誘引者は依頼者にウソをついて、お金を振り込ませたため、詐欺罪が成立します。

ここで、先ほどの民法の不法原因給付により、依頼者はお金を返してもらえないため、損害はないかに見えます。しかし、刑法には財産秩序の維持機能が存在するため、財産秩序が害されるなら処罰に値するとします。

そして、詐欺罪は、全体財産の損害ではなく、個別財産の損害と解されます。

ここで、全体財産の損害とは、100万円で指輪を買ったけど、100万円の車が届いた。100万円を払って、100万円の車が届いたのだから、損害はないという考えです。
しかし、本人は指輪がほしかったのであり車はいりません。この考えを個別財産の損害といいます。

個別財産の損害は、詐欺行為がなければ、処分行為をしなかったという関係にあれば認められます。

よって、依頼者はウソの掲示板だと知っていれば、お金は振り込まなかったという関係にあるため、誘引者は詐欺罪が成立します。

4)誘引者が殺人せずに逃げた
誘引者:詐欺罪
依頼者:刑法犯不成立(暴力行為法違反の可能性)


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