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フォレンジックに物申す4 [フォレンジック]

証拠法の続きです。むちゃくちゃ長いです(長くなりました)~!!

パート3よりもさらに法律的な話になっています。眠たい人は飛ばして下さいww
かなりまともに勉強したので、内容的には間違いはないと思いますが、参考にして下さい。また、ご指摘がありましたらご遠慮なく~。

#私の疑問点は、デジタルフォレンジック(抽出)の証拠能力ではなく、証明力(証拠の価値)の低さです。
#それに、その価値が低いからといって無罪確定などとは甚だ思っていません。その辺、誤解を生まないで下さいm(_ _)m。
#他の証拠で十分に有罪に持っていける例がほぼ100%だと思っています。
#不正アクセス禁止法に触れた場合のみにデジタルフォレンジック(抽出)の話になり得るかもしれませんが、現実的じゃないでしょう…。
#ですから、デジタルフォレンジック(抽出)についてそんなに構えなくても、ただの解析技術だと思った方が良いんじゃないでしょうか?
#それよりもデジタルフォレンジック(ログ等の証拠保全、特に被疑者クライアントの時刻の問題)の方に力を注いでいただきたいなぁって思います。

#今回は証拠能力、すなわち証拠として採用され得るのかについて記述します。
#証明力は証拠能力があることを前提としてその価値が事実認定にどれぐらい価値があるのかのことです。

刑事訴訟について調べたので、刑事訴訟に言及します。

#民事訴訟は、証拠方法の無制限という自由心証主義の一機能があるので、それほど神経質になる必要はないというのは、「フォレンジックに物申す3」で書きました。
#もう少し書くと、民事訴訟の自由心証主義は証拠方法の無制限、つまり裁判所は原則当事者が提出した証拠ならば、採用するか否か(証拠能力ありとするか否か)は、自由に決定して良いことになります。
#ですから、デジタルフォレンジックからの抽出データは裁判所(官)任せってことでしょう。

証拠の証拠能力は1自然的関連性(論理的関連性)、2法律的関連性、3証拠禁止があり、1、2があり、3に反しないものに認められます。

1自然的関連性
自然的関連性(論理的関連性)とは、要証事実に関する必要最低限の証明力の存在をいいます。
要証事実とは厳格な証明が必要な事実で、主要事実、間接事実があります。

この自然的関連性がない証拠は訴訟の無駄ということで、証拠能力を否定されます。

オークション詐欺事件に対して、デジタルフォレンジックから抽出した金銭のやり取りのメールに自然的関連性は認められると思いますが、オークション詐欺事件なのに出会い系サイトへのアクセスしたキャッシュファイルは、自然的関連性がないといえると思います。

さて、自然的関連性が問題となる同様の証拠に、声紋鑑定やDNA鑑定、うそ発見器のポリグラフ検査などが挙げられます。つまり、科学的証拠の信頼性みたいなものです。

科学的証拠については、三井誠教授の本が参考になりそうです。
http://www.kobe-u.ac.jp/info/book/0405_05.htm

科学的証拠は、遺留物の同一性の確認、異動識別といった個別化・特定化のために用いられます。

そして、その要件は、一般的に
1 原理の一般性、2 検査・機器の信頼性、3 原理に基づく手法・技術、4 専門技術を有する者によること
が必要とされています。

これをデジタル・フォレンジックに当てはめると、
1 正確なデータ抽出手法(一般性は現在ない!?)、2 抽出ツールの信頼性(EnCaseのみ!?しかも日本国内ではなく、アメリカで!!)、3 正確な抽出作業に基づく手法・技術(確立していない!?)、4 専門技術を有する(どのぐらいの技術?未知だ…)
になるでしょう。

これらの要件を乗り越えて、先ほどの、メールが詐欺事件に関係するといえて初めて自然的関連性ありが導かれると思います。

2 法律的関連性
法律的関連性とは、誤判のおそれを招く可能性があるため、政策的に否定される証拠をいいます。しかし、証拠の必要性と誤判のおそれがない場合には、法律的関連性は認められます。
法律的関連性で問題になるには、悪性格の立証と伝聞法則と自白の任意性があります。

デジタルフォレンジックで問題となるのは、伝聞法則と自白の任意性だと思います。

#悪性格は過去に同罪の前科、余罪がある場合のみ、同じ特殊な手口でやったという犯人の同一性、主観的構成要件の立証、常習犯等の構成要件の立証の場合に認められます。

伝聞証拠は、公判廷外の供述を内容とする証拠で、供述内容の真実性が立証(要証事実)となっている証拠をいいます。この証拠は、反対尋問による真実性の担保ができないため、原則証拠能力が否定されます。

デジタルフォレンジックは供述証拠か?
供述証拠は、知覚・記憶・表現の過程に誤りが介入するおそれがあるが、反対尋問が不可なため、証拠能力が否定されます。
電磁的データをそのまま抽出するので、誤りの介入のおそれは少ないですが、問題は盗聴テープや防犯ビデオと違い、簡単に改ざんできることです。簡単に改ざんできるということは、事実の認定を誤らせるおそれがあります。

とすれば、供述証拠として扱われる場合も考えられます。しかも、盗聴テープや防犯ビデオは、本人の声や姿から同一性が確認できますが、電磁的データは本人の特定はできません。
すなわち、証拠として認める必要性が低い可能性がありえます。

では、仮に電磁的データが非供述証拠として認められると次は、伝聞か非伝聞かの問題になります。

これは証拠が、例えば詐欺事件なら、メールのやり取りの存在を立証したいのか、メールの中身を立証したいのかによって異なります。
メールのやり取りなら、証拠の存在自体が要証事実になりますが、メールの中身が問題になっているならば、伝聞になるはずです。

この辺りは難しく広範なので、伝聞法則でググって調べて下さい。

まぁ、いずれにしてもきちんと手順どおりに抽出すれば改ざんされていないことが立証できますし、再度第三者機関による鑑定令状に基づく鑑定でも行われれば、問題ないと思います。

最後に自白についてです。
自白は、犯罪事実の全部又は主要な部分を認める被告人の供述をいいます。
自白には、補強法則と任意性(自白法則)が問題になります。デジタルフォレンジックで重要なのは補強法則との絡みです。

補強法則(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、自白が唯一の証拠となる場合は、それを補強する証拠がなければ有罪とすることはできないことをいいます。
この法則は内容が深く色々と分岐されるのですが、趣旨は概ね自白偏重による強要防止と誤判防止です。

で、デジタルフォレンジック(抽出)においても証明力が低くても証拠としての価値が高まる場合が、この補強法則です。

補強証拠となりうる要件は、(1)証拠能力があり、かつ、(2)被告人の供述とは独立した証拠でなければなりません。

そして、その範囲については争いがありますが、判例は供述の全範囲に対する補強証拠は不要で、自白の真実性を担保すれば良いとなっています。すなわち、補強証拠の持つ証明力は自白と相まって罪体(犯罪の客観的事実:何人かが犯罪行為をした事実)を証明することができる程度のものであれば十分であるということになります。

この場合には、たとえデジタルフォレンジック(抽出)の証明力が低くても補強証拠足りえることになります。

3 証拠禁止
これは、違法収集証拠の話なので、デジタルフォレンジックとは直接関係ありません。

以上、見てきたように、証拠能力の存否については困難な部分もあるかもしれませんが、概ね認められるでしょう。
証明力については自由心証主義の範囲なので、相手側(被告人弁護士)が反対尋問を提出し、デジタルフォレンジック(抽出)の証明力を弱めれば事実認定に採用されるかは微妙になる余地があると思います。

ただし、補強証拠としての活用は十分にありえますが、そのような場合が本当にあるかは疑問です。
つまり、他の証拠、例えば金銭の授受や他の確実な証拠によった方が確実ならデジタルフォレンジック(抽出)から得られた証拠を提出する必要性はないのではないでしょうか。


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