刑法の面白い(?)話 [法律]
刑法についての知識を深めていると面白い話がありました。
誤想過剰防衛というやつです。
ものすごく複雑な流れだと思います。
例えば、相手が殴りかかってくるものと誤信し、傍にあった日本刀を、それと認識しながら使用して相手方に切り付けて重症を負わせた
という事例。
本来、相手が本当に殴りかかってくるなら、正当防衛成立の余地がありますが、そうだとしても、日本刀で切り付けるのは相当性を欠く可能性があり、過剰防衛となるのが妥当。
しかし、さらにこの事例では、急迫不正の侵害、すなわち正当防衛が成立するかどうかの要件を誤信しているので、違法性阻却事由の錯誤があることになる。
誤想防衛を、まずどう評価するか。
違法性阻却事由の錯誤
・事実の錯誤として故意を阻却
・法律の錯誤として故意を阻却しない
のいずれかがあります。
違法性阻却事由の錯誤が反対動機の形成を不可能にしたと考え、前者の見解が妥当で、故意を阻却し、誤認について過失があれば過失犯が成立する。
そうすると、誤想過剰防衛の場合、過剰性の認識の有無で異なります。
◎過剰性の認識が無い場合
・違法性阻却事由の錯誤として故意を阻却し、過剰性の認識がないのであるから、故意阻却のまま。
ただし、誤認について過失がある場合には過失犯の成立は否定されない。
・36条2項の適用ないし準用があるかについては、36条2項が防衛行為において、防衛者は急迫不正の侵害に対して、興奮、逆上、狼狽していることから、相当な防衛行為を期待することはできないことから、責任非難が減少するとするのが妥当。
よって、過剰性の認識が無い場合にも36条2項のように責任非難が減少するのは変わらないため、36条2項の準用を認めるべき。
本件においては、過失傷害罪が成立し、36条2項の準用が認められる。
◎過剰性の認識がある場合
・違法性阻却事由の錯誤は認められるが、過剰性の認識をしている以上、反対動機の形成があるのにあえて犯罪を実現したこと、すなわち、正当防衛ではなく、過剰防衛の成立の可能性を認識しているのにあえて実行した場合には、故意は阻却されない。
よって、故意犯が成立する。
本件事例においても傷害罪、もしくは殺人未遂罪が成立する。
・36条2項の適用ないし準用があるかは、上記の通りなので、準用を肯定する。
ただし、過剰性の認識が無い場合でも過失犯が成立し得ることとの均衡から、36条2項の準用を認めても刑の免除は不当であることから、刑の減軽のみ認められる。
本件事例においては、傷害罪、もしくは殺人未遂罪が成立し、36条2項の準用による刑の減軽を認める。
多分、日本刀であることを認識して、相手を切り付けたら、正当防衛と思っていても殺人の故意はあると認定されるんじゃないでしょうか。
誤想過剰防衛というやつです。
ものすごく複雑な流れだと思います。
例えば、相手が殴りかかってくるものと誤信し、傍にあった日本刀を、それと認識しながら使用して相手方に切り付けて重症を負わせた
という事例。
本来、相手が本当に殴りかかってくるなら、正当防衛成立の余地がありますが、そうだとしても、日本刀で切り付けるのは相当性を欠く可能性があり、過剰防衛となるのが妥当。
しかし、さらにこの事例では、急迫不正の侵害、すなわち正当防衛が成立するかどうかの要件を誤信しているので、違法性阻却事由の錯誤があることになる。
誤想防衛を、まずどう評価するか。
違法性阻却事由の錯誤
・事実の錯誤として故意を阻却
・法律の錯誤として故意を阻却しない
のいずれかがあります。
違法性阻却事由の錯誤が反対動機の形成を不可能にしたと考え、前者の見解が妥当で、故意を阻却し、誤認について過失があれば過失犯が成立する。
そうすると、誤想過剰防衛の場合、過剰性の認識の有無で異なります。
◎過剰性の認識が無い場合
・違法性阻却事由の錯誤として故意を阻却し、過剰性の認識がないのであるから、故意阻却のまま。
ただし、誤認について過失がある場合には過失犯の成立は否定されない。
・36条2項の適用ないし準用があるかについては、36条2項が防衛行為において、防衛者は急迫不正の侵害に対して、興奮、逆上、狼狽していることから、相当な防衛行為を期待することはできないことから、責任非難が減少するとするのが妥当。
よって、過剰性の認識が無い場合にも36条2項のように責任非難が減少するのは変わらないため、36条2項の準用を認めるべき。
本件においては、過失傷害罪が成立し、36条2項の準用が認められる。
◎過剰性の認識がある場合
・違法性阻却事由の錯誤は認められるが、過剰性の認識をしている以上、反対動機の形成があるのにあえて犯罪を実現したこと、すなわち、正当防衛ではなく、過剰防衛の成立の可能性を認識しているのにあえて実行した場合には、故意は阻却されない。
よって、故意犯が成立する。
本件事例においても傷害罪、もしくは殺人未遂罪が成立する。
・36条2項の適用ないし準用があるかは、上記の通りなので、準用を肯定する。
ただし、過剰性の認識が無い場合でも過失犯が成立し得ることとの均衡から、36条2項の準用を認めても刑の免除は不当であることから、刑の減軽のみ認められる。
本件事例においては、傷害罪、もしくは殺人未遂罪が成立し、36条2項の準用による刑の減軽を認める。
多分、日本刀であることを認識して、相手を切り付けたら、正当防衛と思っていても殺人の故意はあると認定されるんじゃないでしょうか。
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