ネットで同僚を中傷 [犯罪]
面白いニュースがありました。
ネットで同僚を中傷
http://www.nikkansports.com/ns/general/f-so-tp0-060131-0015.html
「ハッカーに侵入された。書き込みは身に覚えがない」
もし、このことを証明しなければならないのなら、以前から書いていますように、検察側が証明しなくてはなりません。犯罪事実の範囲を画する事実なので、実質的挙証責任が検察側になります。
そもそも、なぜ検察側にあるかというのを少し書きますと、
刑訴法では、検察と被告人側は対等関係にあり、中立・公正な裁判所が判断するという当事者主義的訴訟構造を採用していますが、国家権力を行使できる検察と例え弁護士を雇っても私的パワーしか持たない被告人とは対等関係なんか実質的にあるわけがありません。
にもかかわらず、犯罪事実に関する証拠の挙証責任を被告人が負うとすると、証明が上手くいかなかったから有罪なんてことになり、冤罪発生が多発する可能性があります。
そこで、「疑わしきは被告人の利益に」(疑わしきは罰せずはその先の段階)のために、検察側が挙証責任を負います。
で、元に戻りますと、ハッカー(クラッカーが良いでしょう!)に侵入されて、勝手に書かれたのが事実ではないことを証明するのは困難です。
まず、どこで書いたかはIPを辿れば分かるでしょう。
#これが職場なら、ますます証明が困難です。
で、そのPCが被疑者の自宅なら、クラッカーが侵入していないことを検察側が証明しなければいけません。昨今のウィルス、ワーム、トロイといった脅威を考えれば、侵入していないと100%言い切ることは至難の業です。
#被告人の代理人である弁護士もそこを突いてくる知識があれば、ガンガン突いてくることでしょう。
仮に侵入は100%なかった(ほんとか!?)と証明されたとして、被疑者が書き込みをしたことを証明するのはどうでしょうか?家族が書いたかもしれませんので、アリバイ関係が必要になります。時刻があってなければさらに難しくなります。
また、被疑者の知らない人を家人が連れてきて勝手にパソコンを触ったかどうかも分かりません。この辺りはフォレンジックとは何の関係もなく、通常の捜査と同じ手続ですね。
つまり、いつも書いていますように、フォレンジック関連(今回は掲示板書込の痕跡抽出かな)だけでは、完全な被疑者特定は無理です。他の証拠も当然必要になりますし、被疑者が認めれば終了です。
もう一点、重要なことを忘れていました。
書いた内容が被疑者本人しか知らない場合
これも、重要ですが、これの立証もかなり困難です。本当に最近の出来事で被疑者しか知らないことが明白なら良いのですが、そうでなければ証明は困難ではないでしょうか。
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