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取調時の警官備忘録も開示命令 [法律]

昨年平成19年12月25日に問題となった証拠開示請求の事案について。

詳細は下記参照。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35535&hanreiKbn=01


これは、公判前整理手続及び期日間整理手続における証拠開示についての裁判です。

もともとこの制度は裁判員制度の導入に伴い、規定されました。

その理由として、裁判員制度によって一般人が刑事裁判に関与してくるため、
公判を長期間ではなく、短期間で行う日盗用があり、公判の審理を充実かつ
効率的にしなくてはならないことから、両当事者の意見を聴いて、決定で
裁判所が行うことができるものです。

ここにこの制度の目的があり、趣旨があり、証拠開示もこの審理の継続的、
計画的、迅速に行うことに必要な限りで認められるものだと思います。



事案の概要

自白の任意性を争うことを予定していると主張して、警察官による自白を
強要する威嚇的取調べ、利益提示による自白の誘引等を明示した。

弁護人は、上記主張に関連する証拠として、刑訴法316条の20第1項に
基づき、「被告人に係る警察官の取調メモ(手控え)・取調小票・調書案・
備忘録等」の開示を請求した。

検察官はこれを拒否。

弁護人が裁判所に対して開示命令の請求をした。

東京地方裁判所は、請求は認められないとして棄却。
東京高等裁判所は、請求は認められるとして認容。

最高裁判所は、請求は認められるとして開示命令。


争点は、

1 刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は、
 検察官が現に保管している証拠に限られるか

2 取調警察官が犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録は、
 刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となり得るか



決定について簡単に要約すると

公務員が職務上作成するメモも、捜査機関によって現に保管されているなら、
捜査関係の公文書といえ、検察官において入手が容易なら証拠開示の対象となる。

取調警察官が作成した備忘録等も犯罪捜査規範13条に基づいて作成、保管
されているのであり、検察官は入手が容易であるから、証拠調べとして
関連性があるなら、証拠開示の対象となる。




決定要旨

1 刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は、
 必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず、当該事件の捜
 査の過程で作成され、又は入手した書面等であって、公務員が職務
 上現に保管し、かつ、検察官において入手が容易なものを含む。

2 取調警察官が、犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であ
 って、取調べの経過その他参考となるべき事項が記録され、捜査機
 関において保管されている書面は、当該事件の公判審理において、
 当該取調べ状況に関する証拠調べが行われる場合には、刑訴法31
 6条の26第1項の証拠開示命令の対象となり得る。


ここで、重要な部分は、証拠開示ができるものとして、

必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず、当該事件の
捜査の過程で作成され、又は入手した書面等であって、公務員が
職務上現に保管し、かつ、検察官において入手が容易
であるものも
含む。

そして、

公務員がその職務の過程で作成するメモについて、専ら自己が使用する
ために作成したもので、他に見せたり提出することをまったく想定しない
ものは、証拠開示命令の対象とするのが相当でない


しかし、

警察官の作成する備忘録は、犯罪捜査規範13条では、作成し、
保管しておくべきもの
としているのであり、取調警察官がこれに基づき
作成した備忘録であり、取調の経過その他参考となる事項が記録され、
捜査機関によって保管されている書面は、個人的メモの域を超え、
捜査関係の公文書
ということができる。

これに該当する備忘録については、当該事件の公判審理において、
当該取調状況に関する証拠調べが行われる場合には、証拠開示の
対象となり得る。
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