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某店の虚偽の説明 [法律]

http://hunter-investigate.jp/news/2014/04/post-476.html

紳士服の店のひどい話。

さて、これは刑法でいう詐欺罪なのでしょうか?

今回の問題は、通常価格と言われその価格で買おうとしている女子学生がいて、断って帰ってくることもできたという点です。

結論は、成立にはかなり難しいのでは?と思いました。


強引に有罪に持っていくための検討をしてみました。
せっかくなので要件の確認と当てはめ。

店側の立場とすれば、
虚偽の説明ではあったが、女子学生は通常価格でも構わないと思い購入しているのであるから、契約は成立している。
格安でなければ買わないとの主張がなかった。
虚偽の説明をしたことと、通常価格で購入すると決めたのは、直接の因果関係が無い。
などと反論するでしょう。


条文
刑法246条1項
1、人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2項詐欺は詐欺利得罪であり、今回は異なるため、検討外とします。

一般的な構成要件は、
欺く行為、相手方の錯誤、錯誤に基づく財物の処分、財物の占有移転



まず前提として客体
財物とは、他人が占有する他人の財物をいう。
今回は、金銭が対象なので財物に当たります。



■詐欺罪
人を欺く行為を行い、これによって錯誤が惹起され、錯誤に基づいた交付行為があり、交付行為による財物の移転があり、これらが相互に因果関係が必要となる。

そのため、錯誤がなければ交付行為を行わなかったであろうというような重要な事実に関することが必要。

■錯誤
錯誤は、自己の認識と事実が不一致になっていることである。

■交付行為
錯誤により生じた瑕疵ある意思に基づいて、財物が交付される必要がある。




●あてはめ
今回、女子学生は、「印刷物にあった《フレッシャーズ限定 スーツも揃う》と謳った「19,000円」の5点セット」の安売りがされていると思い、店を訪問。
スーツを選択し、いざ支払いをしようとしたところ、43,640円の請求。

店側は、女子学生に「5セットはもう出た」と説明し、そのため女子学生は通常価格での販売しかされないと思い込み、支払う意思になったものと考えられる。

すなわち、ハガキを見た学生がスーツセットを買いに来て、まだ5セット売れていないにもかかわらず出ていると店側は説明している。店側は、このように虚偽の説明をしており、「人」である女子学生に対して欺く行為をしている。

また、学生は、店側の説明を信じ込み、本来19,000円という安い価格で買えるのに、通常価格で支払わなければならないと思い込んでおり、錯誤に陥っている。

そして、通常価格を支払わなければならないという瑕疵ある意思に基づいて、金銭を支払おうとしている。

ここで、学生は、通常価格なら支払わないと断ることができたとも思える。

しかし、
・学生は店側の説明を信じ込み、格安で買えることはできなくなったと思い込んでいること
・学生であり、それほど社会経験も乏しく、店側が虚偽の説明をするとは考えていないこと
・入学式を数日前に控えていることから時間も迫っていること
・選択した時間がもったいないと考えること
・女子学生自身がハガキと違うと思っても言えなかったこと
・あるいは、女子学生自身がハガキの小さな文字を見落としたかもしれないと思っていたこと
・スーツを選択したのに支払わなければ、店の人に迷惑が掛かるとも思ったこと
などから、通常価格であっても仕方なく支払う意思になったものと考えられる。

そして、店側の欺く行為を知り錯誤が無ければ、すなわち、通常価格で購入しなくても良いことを知っていれば43,640円で買わなかったであろうから、重要な事実に関して錯誤があり、錯誤と交付行為に因果関係が認められる。

女子学生は、金銭を支払っておらず、財物の処分、占有移転が無いため、詐欺未遂罪(246条、250条)が成立。


■問題
・重要でない事実に関する錯誤を惹起するにすぎない行為は詐欺罪否定
判例:大判大正8年3月27日
事案:商品の名称を偽ったが、品質・価格などには変わりがなく、買主は自己の鑑識をもって買い受けた事案

・虚偽の説明がされているが、通常価格は本来の値段であり、またその値段で買う必要は必ずしもなかったこと。

・女子学生は、通常価格を知った段階で問い質す余地があったこと。






◎民事系で考えると、

錯誤に陥っている(民法95条本文)

詐欺にあっている(民法96条1項)

債務不履行解除

があります。


民法95条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

民法96条1項
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。





判例は、錯誤と詐欺が競合するときは、錯誤が優先するとしています。

錯誤無効を考えてみます。

要素とは、意思表示のために重要な事柄であって、当該錯誤がなければ通常一般人ならば意思表示をしなかった関係にあれば良いとされています。
錯誤は、動機の錯誤が問題になるが、内心の問題であっても明示または黙示の動機が示されていれば錯誤に当たる。

女子学生は、ハガキを持って行っており、店側からも5セットは売れたと説明されているが、19,000円の格安のセットを購入したいとの動機を有していたことは店側は知りえたといえ、動機の

そして、今回の女子学生には、店側に問い質さなかった、断れたのに断らなかったなどの軽微な過失はあったかもしれないが、重大な過失とはいえない。

よって、店側の虚偽の説明により、女子学生に錯誤があり、無効主張できる。





債務不履行解除の場合は、事前の説明が虚偽であり、説明義務違反があったといえます。

そして、女子学生が購入しようとしている段階であり、契約が間近に迫っていたことから、この2~3着しか売れておらず19,000円で買うことができたとの説明義務は必要であったにもかかわらず、虚偽の説明をしたことによって、通常価格で契約したのであり、契約締結前の過失というより、害意があったといえ、債務不履行があったといえます。

よって、債務不履行解除ができ、損害賠償請求をすることが可能です。

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