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GPS捜査判決の解説 [法律]

とりあえず、GPS捜査のことを書いておけば注目されるらしい。

という邪な考えではなく、現在GPS判決について調べているので、詳細は記載しないがさわりだけ触れてみる。

そもそもGPSとは、Global Positioning Systemのそれぞれの頭文字を取った略語であり、アメリカ合衆国によって、航空機・船舶等の航法支援用として開発されたシステムのことをいう。このシステムは、上空約2万kmを周回するGPS衛星(6軌道面に約30個配置)、GPS衛星の追跡と管制を行う管制局及び測位を行うための利用者の受信機で構成されています。GPS衛星から受信機までの距離は、GPS衛星から発信された電波が受信機に到達した際の時刻差に電波伝搬速度を掛けることにより求められる。衛星から発信される電波には、衛星の軌道情報・原子時計の正確な時間情報などが含まれており、3次元座標(x、y、z)及び正確な時刻(t)を求めるために4元連立方程式により正確な位置を計測できる。

このGPSを利用したGPS捜査には、対象車両にGPS端末を取り付けて監視を行う接触型と、対象者が所有している携帯端末に対して電気通信事業者から位置情報の提供を受ける非接触型とがあり、本件で問題となっているのは接触型の捜査手法である。

GPS捜査には様々な特徴や問題があり、電波の伝搬範囲であれば①常時、②容易に、③相当程度正確に④長期間位置情報を取得できること、⑤プライバシーの保護の期待が強い場所であっても行動を把握できること、⑥対象者に気付かれずに位置情報を取得できること、⑦取得した位置情報を記録として蓄積できること、⑧違法に位置情報を取得された場合に権利回復を図る機会が与えられていないこと、⑨位置情報の探索結果を取得・集積し、他の様々な情報と合わせて分析・利用することによって対象者の親族や交友関係等のプライバシー情報まで網羅的に取得し得ることなどが挙げられる。

このGPS捜査の法的性質について、学説上、色々な争いがあった。
GPS捜査の法的性質について大別すると、GPS捜査は常に強制処分であるとする強制処分説、捜査の在り方次第で任意処分にも強制処分にもなる二分説に分かれ、さらに、GPS捜査を強制処分と考えた場合に、現行法上の令状に基づき実施できるとする積極説、新たな立法措置がなければ実施できないとする消極説に分かれる。

最高裁は、GPS捜査は強制処分であり、令状が必要だとしており、最高裁の判断の特徴は、①GPS捜査手法一般について、GPS端末を個人の所持品に秘かに装着して個人のプライバシーを侵害し得るものであり、公道上を尾行することやカメラ撮影することとは異なり、公権力による私的領域への侵入を伴う捜査であること、②憲法35条は、住居、書類及び所持品に準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれるとしたこと、その上で、③私的領域である個人のプライバシーを侵害し得るGPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものであり、令状がなければ行うことができない強制処分であること、を明らかにした点にある。

令状の種類として、GPS端末を取り付けた車両からの電波を受信して、警察官らが操作して車両の所在と移動状況を把握することになるため、刑事訴訟法上の検証と同様の性質を有することになると考えられる。しかし、車両にGPS端末を取り付けることにより、元々存在する情報を収集するのではなく、新たにGPS端末によって位置情報を収集可能な状態にした上で、車両の所在の検索を行う点において、検証では捉えきれない性質をも有する。

また、刑訴法上の各種強制の処分については、手続の公正の担保の趣旨から、原則として事前の令状呈示が求められているが(同法222条1項、110条)、GPS捜査は、被疑者らに知られないようにする必要があるため、事前の令状呈示を行うことはできない。もっとも、他の手段によって同趣旨が図られ得るのであれば良いが、どのような手段を選択するかは、一次的には立法府に委ねられていると解されている。

仮に法解釈によりGPS捜査を許容する場合、裁判官が発付する令状に様々な条件を付ける必要が生じるが、的確な条件の選択を行わない限り是認できないような強制処分を認めることは、法の趣旨に沿うものとはいえなくなる。

結果的に、最高裁は、「以上のとおり、GPS捜査について、刑訴法197条1項ただし書の「この法律に特別の定のある場合」に当たるとして同法が規定する令状を発付することには疑義がある。GPS捜査が今後も広く用いられ得る有力な捜査手法であるとすれば、その特質に着目して憲法、刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい。」として、GPS捜査を行うためには立法的な措置を講じる必要性があると判示した。

GPS捜査は令状なくして行うことのできない強制処分であるにもかかわらず、本件GPS捜査は令状なく行われたのであるから違法であり、第1審判決を支持し、違法収集証拠排除法則により、本件GPS捜査によって直接得られた証拠及びこれと密接な関連性を有する証拠の証拠能力を否定した。しかし、その他の証拠については、本件GPS捜査に密接に関連するとまでは認められないとして証拠能力を肯定した。そしてこれらの証拠能力ある証拠に基づいて被告人を有罪とした第1審判決は正当であること、第1審判決を維持した控訴審判決の結論自体に誤りはないので、上告は棄却され被告人は懲役5年6月の有罪判決が確定した。
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